WORKING

人材育成のための5つのワーキング活動

平成23年度活動報告

実施体制

平成23年度は、本プロジェクトで取り組んでいる個々のプログラムを推進させるため、新たに、医療機器操作強化WG、実習指導者研修検討WG、実習指導要項作成WG、教育研究推進WGの4つのWGを立ち上げた。それぞれのWGには、プロジェクトメンバーが必ず構成員として参加するとともに、保健学科や臨床の多部門多部署のメンバーも参画し、事業推進体制を強化した。
プロジェクト年間計画に沿った各プログラム内容を、それぞれのWGで個別に検討、実践し、各WGの進捗状況をSPWGで報告することで、情報共有の徹底を図った。
その後、情報共有した各WGの進捗状況をプログラム推進WGで協議、検討し、実施結果や効果を検証した。
上位にあるキャリアシステム運営実行委員会では、各プログラムの計画、実施、目標達成度、評価測定状況、改善点などの報告から、学術的な分析や検討について助言を得て、各プログラムを多角的に分析・改善を加えることで本プロジェクト全体を推進させた。

各プログラム開発を担当するWGを立ち上げ、WGメンバーとして多部門多職種が組織横断的に連携することで、事業推進効率が向上し、取組み内容の深化が図れた。

プログラム開発

平成23年度プログラム開発では、「安全に実施する静脈注射教育プログラムの継続的推進」「身体侵襲の大きい特定の医療機器に関するインシデントレポートの分析調査後の介入方法の検討」「平成23年度新人看護師育成プログラムの実施・効果検証」「実習指導者育成研修の継続実施」「実習指導要項開発と一部運用」を目標に取組みを行った。
本年度からの新たなプログラム展開として、以下2つに着手した。

  • 医療機器操作強化プログラム: 輸液ポンプ・シリンジポンプに関する教育研修プログラムの開発と実施
  • 実習指導要項開発プログラム:平成23年度版実習指導要項の完成と活用

1.静脈注射教育プログラム

平成23年度九州大学病院看護部のIVナース育成の基本指針として「成人患者に対する静脈注射実施の知識と技術を有していること」を掲げ、育成対象を全部署に拡大し教育プログラムを実施した。
【講義による静脈注射に関連した専門知識修得・再確認】、【実技演習による安全・安心な手技・手順確認】、【筆記試験による知識修得状況確認・客観的評価】、【実技試験による安全・安心な実践力確認、評価者による客観的他者評価】の4段階の教育プログラムを提供し、育成対象者1,012名中821名(81.1%)のIVナースを育成した(育成者数は累計数)。
プログラム受講者の質問紙調査結果から、大学病院として特に注力している「感染対策知識」「安全対策と事故防止」に関する知識修得は高く変化しており、プログラム研修効果が出ていることが明らかとなっている。
また、専門分野からの講師を迎えた講義や大学病院看護手順に基づいた手技・手順の確認、客観的な知識修得確認、実技での看護実践力確認という段階的プログラム提供は、プログラム受講者の静脈注射に対する自信上昇と不安感減少をもたらしている。
プログラム受講による育成されたIVナースの臨床現場への影響では、患者さんからは「丁寧な説明と安全な手技で信頼できる」「実技だけでなく、知識が備わっていると感じると安心する」という評価を、医師からは「法律や院内基準に則って教育を受け、合格した看護師が静脈注射を行うので、安心して任せられ、患者に向かう診療時間が増えた」「診療のレベル向上に繋がる」と肯定的評価を受けており、チーム医療の推進に貢献している。

2.医療機器操作強化プログラム

平成23年度は、本プログラムを推進させるため、医療機器操作強化WG(通称MEWG)を新たに立ち上げ、プログラム開発を推進させた。MEWGには医療安全管理部、MEセンター、メーカーを参画メンバーとし、プログラム開発を検討した。
平成20年〜22年度までの3か年のインシデントレポート報告の分析結果から当院における輸液ポンプ・シリンジポンプ操作に関する課題や、看護職員の輸液ポンプ・シリンジポンプに関する操作頻度や操作に関する自信度、知識修得状況の分析結果をもとに、教育研修プログラム内容を設計し、開発した。
MEWGでの分析・検討結果をもとに、本プログラムでは、高度先端医療を担っている大学病院看護職員として必須である輸液・シリンジポンプ操作を安全かつ正確に操作できるよう教育研修プログラムを提供し、「患者の生命を守る」看護職員の医療機器操作・管理能力の向上・均てん化を目指している。
教育研修プログラムでは、4段階で展開することとした。
第1段階では、医療機器メーカーが主催している研修会に院内での研修時に指導役となる2名の副看護師長を参加させ、指導者を育成した。
第2段階では、輸液ポンプ・シリンジポンプ指導者育成研修においてファシリテーターを担うMEWGメンバーを対象に、前述第1段階で育成された指導者が伝達講習を行った。

第3段階では、輸液ポンプ・シリンジポンプ指導者育成研修を開催し、各部署での輸液ポンプ・シリンジポンプ研修時に指導者役割を担う看護職員を40名育成した。

次年度より、第3段階で育成された各部署の指導者が中心となり、部署内で輸液ポンプ・シリンジポンプ研修を行う第4段階を推進させる。
平成23年度は教育研修プログラムの第3段階までを終了させたが、各部署での研修で指導者役割を担う看護職員は研修参加後には、「知識」や「教育プログラムへの取組みの必要性の認識」が向上しており、研修実施効果が確認された。

3.新人看護師育成プログラム

平成23年度新人看護職員教育プログラムでは平成22年度実績をもとに、下記内容を変更の上、開催した。

  • 新卒看護職員の1年間の看護技術到達度が依然として低い「救命救急の技術」補完:
    「急変時の看護」を追加(平成24年2月開催)
  • 研修参加者からの研修時期・満足度調査結果や新卒看護職員の看護技術修得度目安・各部署での臨床実践で求められる看護技術項目を精査:
    「経管栄養」「膀胱内留置カテーテル挿入・管理」「導尿」「吸引」の研修時期早期化
  • 看護技術修得の継続的向上支援:
    入職2年目看護職員を対象とした「部署間研修」を開催
  • 早期からのキャリア構築支援:
    ポートフォリオによる目標管理、研修管理を導入

上記内容を変更の上、平成23年度新人看護職員教育プログラムを開催した結果、入職1年後の看護技術修得度が向上した(平成22年度と23年度を比較した結果、看護技術14領域中12領域で向上)。本プログラム取組み開始以降、新卒看護職員の入職12か月後の看護技術修得度は向上傾向にあり、平成23年度は特に、課題であった「救命救急の技術」向上に貢献している。
本年度は、副看護師長で構成された教育WGで新卒看護職員の入職1年後の到達目安を明確にしたことで、技術向上に留まらず、目標に沿った研修プログラムが提供できているか否かを可視化することが出来た。
また、継続的な看護技術修得向上支援を目的とした「部署間研修」では、配属部署では実践・見学する機会が稀有な看護技術を体験することにより、看護技術修得の補完とともに、「研修参加により、観察視点が良く理解でき、病棟看護につなげることができる」など自部署での看護ケアと他部署での処置との繋がり、必要となるケアのポイントを学んでおり、患者を中心とした看護ケアの流れと自部署で担当する看護ケアの関連性が統合され、看護実践力向上を図っている。
ポートフォリオによる目標、研修管理は、研修参加前に研修の学習目標設定を行うことで、積極的な研修参加に繋がると新卒看護職員の8割以上が評価している。
また、研修参加で気づいた疑問や自己課題をポートフォリオにより、各部署の教育担当副看護師長と共有することで、助言や部署での研修指導などへ繋がる効果があった。

4.実習指導者育成プログラム

平成23年度新たなに実習指導者役割を担う看護職員28名を対象に、保健学部門看護学専攻教員、教育学部教員と連携して「実習指導者研修会」を開催し、実習担当指導者を育成した。
平成22年度実施した実習指導者を対象とした聞き取り調査結果より、実習指導者を担う看護職員は、【組織的に構築された実習指導体制がなく、各病棟・部署の裁量に一任され、学生を指導しなければならない状況に不安や不満を感じていること】、【自分自身の教育的指導スキルに対する不安】、【自己の描いている学生像と実際の学生のギャップ】、【思い描く理想的実習指導者としての在り方と実際の指導内容とのギャップ】、【専門職者としての倫理的配慮に関する苦悩】を抱えていることが明らかになった。 
そのため、実習指導要項作成による実習指導環境整備と並行して、平成23年度研修会には、教育指導に関する講義で知識修得を図るとともに、実習指導者による体験談・グループワークを設け、実習指導者間の困難の共有を行い、学生指導に対するモチベーション低下を予防した。
その結果、実習指導者研修会参加者の知識向上が図られ、教師効力尺度は研修参加前後で有意に上昇した。

5.実習指導要項開発プログラム

看護部、看護部教育担当部門、各看護単位から選出された実習指導者、保健学部門看護学専攻教員など総勢39名で構成された「実習指導者会議」を毎月1回開催し、実習指導上の情報共有や問題解決を図るとともに、臨床による「実習指導要項」を平成23年9月に完成させた。完成した実習指導要項は翌10月からの看護学臨地実習で運用を始めた。

教育指導者育成

本プロジェクトにおける平成23年度教育指導者育成では、以下の指導者を育成した。

教育指導者育成:
保健学科への1年間の人事交流により実習指導や講義の中でのTA(ティーチング・アシスタント)実践により教育指導力を向上させた。また、臨床現場での経験、保健学科での交流を通して実習指導者と教員間の情報共有の橋渡し役を担い、効果的な実習運営や看護基礎教育課程と臨床現場のかい離を埋める役割として貢献した。

平成22年〜23年までの2か年で各年度1名ずつ合計2名の教育指導者が育成され、臨床現場において、人事交流での学びを活かした活動を行っている。

教育担当指導者育成:
保健学部門看護学専攻教員と看護部教育部門が連携して「教育担当者研修」を、開催し、各部署で教育担当指導者役割を担う人材を育成した。教育担当指導者は、新卒看護職員教育に関連した講義やワークショップを通して理論的に新人教育を学び、部署の新人教育計画を作成、実践した。教育計画立案や実施などの実践的活動を通して、部署の新人教育マネジメント能力と教育指導力を向上させた。

平成22年〜23年までの2か年で合計51名の教育指導者が育成され、研修や実践活動を各部署の新人教育に役立てている。

実習担当指導者:
実習指導者育成プログラムで提供している「実習指導者研修会」への参加により、各部署の実習担当指導者を育成した。研修参加により実習指導に関する基礎的知識、指導技術が有意に向上し、効果的な実習指導に貢献している。

平成21年度〜23年度までの3か年で合計100名が実習指導者研修会に参加し、実習担当指導者としての資質を向上させ、各部署での実習指導を支援している。

人事交流

平成22年度に引き続き、看護部より、大学院修了者を1名選出し、保健学部門看護学専攻に1年間の人事交流を行った。
人事交流者は、看護基礎教育の運営及び看護学生を取り巻く学習環境等を理解し、TAとして講義や演習、実習を担当し、実践的に教育技法を習得した。
また、保健学部門看護学専攻教員とともに、病棟看護職員の看護研究支援を行った。
保健学部門看護学専攻教員による各専門分野の臨床でのブラッシュアップ研修には、5名の教員が9つの部署に研修計画に沿って 参加した。

キャリアパス構築

キャリアパス構築では、1,100名を超える看護職員を有する大学病院において、1人ひとりの看護職員が自律して目標とするキャリア実現・構築ができるよう支援する「キャリアパスナビゲーションシステムを開発する。キャリアパスナビゲーションシステム開発は【キャリアナビゲーションシステム開発】【キャリアパス構築支援】【育児休業復帰支援】の3本柱で構成している。平成23年度は、各部署を管理する看護師長を対象に、スタッフのキャリア支援を行う際、どういう情報が必要であるかや、育児休業復帰、または取得中の看護職員を対象に、育児復帰支援としての教育プログラムのニーズ調査を行った。
調査結果をもとに、プログラム内容を検討し、キャリア支援に必要な情報については、【キャリアナビゲーションシステム】内にデータ蓄積ができるようにした上で導入した。
キャリアナビゲーションシステム導入により、1,100名を超える看護職員の基本情報がシステム管理でき、看護技術修得度チェックや研修参加申し込み、参加履歴の保存など看護職のキャリアを蓄積できるようになった。

その他

1.講演会・交流会開催

平成23年12月4日に「看護実践力向上を目指したプログラム開発と実践」をテーマに本プロジェクト講演会を開催した。
本年度は、シミュレーション機器を利用した教育研修について、演習を含む参加型講演会を開催した。
今回の講演会では、講演会参加を通じて、各施設でのシミュレーションを用いた研修の組み立て方や教育方法を学んでもらい、各施設での研修実践や教育プログラム作成の一助としてもらえることを講演会開催の狙いとして実施した。
参加者の7割以上から「新人教育」や「シミュレーション教育内容や企画立案」に参考になると好評を得た。

2.学会での報告・発表内容

  • Global Learn Asia Pacific 2011 Global Conference on Learning and Technology
  • 第8回日本M&S医学教育研究会
  • 第13回日本医療マネジメント学会学術総会
  • 第15回日本看護管理学会年次大会
  • 日本看護学教育学第21回学術集会
  • 日本看護サミット
  • 第8回日本eラーニング大賞
  • 第31回日本看護科学学会
  • 福岡県新人看護職員研修責任者研修フォローアップ公開発表会

「第8回日本eラーニング大賞」では本院で取り組んでいる「eラーニング教材開発(静脈注射教育プログラムにおける筆記試験対策用eラーニングシステムを活用した模擬試験の有効性」で奨励賞を受賞した

平成23年度看護実践力ブロッサム開花プロジェクト活動報告書

人材育成のための活動内容

             

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